今日は、タンザニアの出産についてお話したいと思います!
タンザニアのキリマンジャロ山のふもとにあるモディオ村に行きました。
ジョイセフからのホワイトリボン募金や愛・地球博の万博で 集めた募金などから、
こうした伝統的助産師さんのトレーニングが行われています。
さて、突然ですが、ここで問題です。
この↓にある写真は、一体何の写真でしょうか?
これは、実はこの村で昔使っていた出産キットなのです!
何を使っていたかと言うと…
① 出産時に下に敷く、動物の皮。
② へその緒を結ぶバナナのつる
③ ナイフ (かなり錆び錆びですね~)
④ ナイフを研ぐ石 (そこらへんに落ちているもの)
⑤ ハーブの葉
出産の介助に立ち会う時にも、手を洗いません。
血まみれになる出産ですが、牛の皮は洗って再利用します。
感染症になる確率もばっちりですね!
ナイフは錆び錆びです。
研ぎ石も、どう見てもそこらへんに落ちているものを拾ってきただけでしょう。
こんなのでおへその緒を切るのか!!!
お母さんや赤ちゃんが破傷風になって亡くなってしまいますよね…。
そして最後のハーブは、これは赤ちゃんが生まれた時に息をしていなかったら、
このハーブを口の中で噛み砕いたものを、赤ちゃんの顔に吹きかけるのだそうです。
さて、次に出産キットの第2ステージを紹介します。
① 石鹸
② 手を洗うためのミネラルウォーター
③ コーンの茎。(爪の間を洗うためのもの)
④ おへその緒を切るためのカミソリ
⑤ バナナの葉 (下敷き)
⑥ アルコールランプ (家の中が暗かったり、夜間や明け方の出産のため)
⑦ へその緒を止血のために縛る布きれ
⑧ 瓶の中に入ったメイズと豆と小石
さぁ、だいぶ発展してきました。
手を洗うようになり、衛生概念が育ってきました。
出産の際に下に敷くものも、何度も再利用するのではなく、
使い捨てに出来るようなバナナの葉になりました。
でも、おへその緒を切るためのカミソリは、使い捨てではなく、
再利用されています。まだまだ危険が残っていますね。
さて、この⑧の瓶の中に入ったメイズ(とうもろこしの粒)と豆と小石。
これは一体なんなのでしょうか???
これは、文字の読み書きが出来ない伝統的助産師さんたちが、
統計を取るために使用していた、大切な道具です。
自分が出産に1回立ち会ったら、石ころをひとつ入れます。
お母さんと赤ちゃんが、二人で元気に生まれたら、メイズと豆を入れます。
そして。
お母さんが亡くなったらメイズを、赤ちゃんが死んだら豆を2つに割って入れます。
自分が一体何人のお産に立ち会ったのか。
何人の赤ちゃんが無事生まれ、何人のお母さんが無事に出産したのか。
そして、一体何人のお母さんと赤ちゃんが、大切な命を失ったのか。
そうした数の統計を取るにも、彼女たちは文字が書けません。
ですから、このようにして、伝統的助産師さんたちは、
石ころやメイズ、豆の入った瓶をヘルス・センターなどに持って行くのです。
そして最後に、出産キットの第3ステージ。
伝統的助産師さんたちのトレーニングも完了し、正しい知識を取得しました。
今までやってきた出産がいかに危険だったのかが分かり、
ジョイセフからの支援で、出産キットも揃いました!
① 石鹸
② 使い捨てカミソリ(使い捨て)
③ ゴム手袋 (出産介助時の)
④ 下に敷くビニールシート(使い捨て)
⑤ へその緒を止血するための鉗子
⑥ 出産に関する注意事項等のパンフレット
⑦ 出産後、赤ちゃんをくるむための綺麗な布
⑧ 出産を記録するためのノート(この頃には字も書けるようになりました~!)
最初の頃から比べると、かなり画期的になり、
お母さんたちが衛生的な環境で出産が出来るようになりました。
とは言え、日本から比べると、かなり簡単なセットですよね…。
私は出産の経験はありませんが、出産の経験のあるみなさん、
これで出産しろと言われたらどうですか?
日本のお産事情も含め、是非お教え下さいね!
◇ ◇ ◇
現地のトレーニングを受けた伝統的助産師さんたち。
母子保健活動の意思を表した歌を歌ってくれました!
7 件のコメント:
きれいな写真、と思ってよく見たらなんと出産キット!しかもどうやって使うのかchicoさんの解説を読まないと想像もできませんでした。日本での出産とは比べ物にならないですね、まさに命がけ。私は3人目ではじめて自宅で産みたいと思いましたが、それでも勇気のいることでした。でも結局早産で、病院のお世話になりましたが・・。このキットでお産なんてこわくてありえませんー。
motherさん、コメントどうもありがとうございます!私は出産の経験はありませんが、あのキットで出産しろと言われたら、正直怖くて出来ません…。
とは言え、一番最初のステージの出産キットに比べれば、研修後、遙かに衛生的なお産が出来るようになりましたよね。
最初のステージで、息をしていない赤ちゃんの顔に噛み砕いたハーブを吹きかける…とあったように、タンザニアでは、伝統的祈祷師のような存在も未だ多くいるようです。
出産キットの進化 3段階まで丁寧な説明ありがとうございました。
ジョイセフのサポートという恩恵を受けて無事生まれてくる子供達がいるのですね。伝統的助産師の方々をしっかり研修して、安全性を高めた活動ぶり、本当に大変な事だったでしょう。お疲れ様です。
最後の映像、嬉しくなりました。
こんにちは。
初めてコメントさせていただきます、bisです。1枚目の写真はきれいなブルーで心惹かれましたが、出産キットとは全くわかりませんでした!私は病院で出産したので、どんな道具を使っているか、医師や看護師が手を洗っているかなんて考えてもみませんでした。
私達にとって「当然」の衛生が、どこの国の母親にとっても「当然」の事になるといいですね。
*Pandaさん*
伝統的助産師さんは、WHO(世界保健機関)などにも正式には認められていないのです。でも、こうした伝統的助産師さんに頼る以外ない場所というのが、世界には沢山あります。
タンザニアでも町に出ればお医者さんもいますが、結局遠かったりして、多くのお母さんは伝統的助産師さんに頼らざるを得ないのです。ですから、ジョイセフは伝統的助産師さんにトレーニングをして、一人でもお母さんたちが安心してお産ができることを目指しています!
*bisさん*
こんにちは!初めまして。
コメントどうもありがとうございます。
そうですよね、日本でお医者さんにかかる時、お医者さんや看護婦さんが手を洗っているかどうかなんて「当然すぎて」考えもみたことないですよね!!自分の切り傷触る時だって、自分で手を洗うし。
「当然」って、考えてもみたことなかったですが、本当はとても幸せなことなんですね。
こんにちは。連続投稿失礼します。
>>伝統的助産師さんは、WHO(世界保健機関)などにも正式には認められていないのです。でも、こうした伝統的助産師さんに頼る以外ない場所というのが、世界には沢山あります。
そうなんですね。日本とは事情が正反対なのも興味深いです。
日本は、病院での出産で、今度はWHOで勧奨しない会陰切開や分娩台でのお産を当たり前のように行います。
オーバーメディカルです。モノも余っている日本ですが、医療もやりすぎなほどやってしまうのです。
昔の日本でも、自宅でお産婆さん(伝統的助産師さんですね)の介助で産むのが当たり前でした。それは1960年を境に病院などでの施設分娩に反転します。1960年代のたった10年で、8割以上の人が施設分娩に移行したのです。それは、いろいろな理由が挙げられますが、戦後アメリカから「衛生面」を理由に指導が入ったということもあったと思われます。
今ではみなさんご存じのとおり、日本では病院出産が主流で、自宅出産は全体の1%ほどです。
しかし、緊急のときの救命措置の責任問題で訴訟があいついだり、夜中のお産に立ち会わなければならない、などで産科医が過酷な労働条件にどんどん減少し、各地で産科が閉鎖の危機にみまわれています。
そこで伝統的な助産師さん、の立場がここにきて見直されてきている背景があります。もちろん、それは衛生的で医学が進歩した日本が、もう一度立ち戻ることができるという背景なのですが。
私自身、自宅出産をしたものです。
自宅出産というのは前提に母胎の健康はもちろんですが、「衛生」「技術と冷静な判断力がある助産師」「医療的なフォロー」が整なわなければできないもので、それを考えると、むしろ日本のような先進国でないと安全にできないものなのだと改めて感じました。
大切なことをお教えいただいた感です。
ありがとございます。
コメントを投稿