2009年1月27日火曜日

その2~HIV陽性であることをカミングアウトしたエスピナさん~ 

昨年ザンビアを訪問したときに、HIV陽性者のエスピナさんという女性に出会いました。エスピナさんは、当時33歳で、3人の子どもの母親。2006年に夫を亡くし、その後自分がHIVに感染していることを知り、HIV陽性者が支えあうサポートグループのメンバーになりました。サポートグループに入り、自らがHIVであることをカミングアウトし、地域でのHIV予防の啓発活動を行っているのです。2回目に結婚した夫は、HIV陽性者で同じサポートグループのメンバーでしたが、2007年に亡くなりました。

エスピナさんのように、エイズで夫に先立たれたり、また離婚したり、職を失ったり、一人で子どもの面倒を見なければならないHIV陽性の女性が多く、経済的にとても困難な状況があります。ザンビアの女性の間での言葉で、「エイズは数ヶ月、もしくは数年は生きられる。でも飢餓に直面すると、家族も自分自身も明日生きていけるかわからない。」との言葉がありますが、困難な現状を強く物語っていると思います。

そんな状況の中でもエスピナさんは、「私はポジティブに生きたかった。自分の経験をシェアすることによって、一人でもHIV/エイズで悲しむ人を減らしたい。またHIV/エイズへの差別や偏見もなくしたい。」と語る彼女の小さな身体から湧き出る力強い意志と生きるエネルギーを感じ、勇気をもらう想いでした。仲間同士で支えあう姿が、地域の人々を動かす原動力になっていることが強く心に残っています。

このようにHIV陽性の女性たちをエンパワメントしよう!と始めたのが、Save Mother from AIDS キャンペーンの一環で行っている「ヤギさんプロジェクト」です。ヤギのつがい(オスとメス)を贈ることによって、ヤギを育て、増やして、ヤギを売り、収入を得ることによって経済的な自立へのサポートを行っています。みんながポジティブに生きられるようにとの想いを込め、昨年は23人のHIV陽性の女性にヤギのつがいを贈りました。

ジョイセフは、昨年11月24日(月・祝)に、「エイズで悲しむお母さんを0人に!~アフリカのHIV陽性の女性の現状はいま・・・私たちにできることはなんだろう?~」と題してエイズデーイベントを開催しました。ゲストには、女優の一色紗英さん、昨年ザンビアを訪問した建築家の遠藤幹子さん、ジョイセフの石井澄江事務局長によるトークイベントを行いました。アーティストである一ツ山チエさんによるヤギのディスプレイとフォトグラファーの今西礼子さんによるザンビアの写真パネルによって、アフリカの青い空と広大な大地の雰囲気が漂う、とても素敵な空間が創りだされました。当日のトークは、ポッドキャストによってこちらより
現在配信中ですので、是非聴いてみてください!
http://www.joicfp.or.jp/jpn/aids/event.shtml

2009年1月23日金曜日

エイズで悲しむお母さんを0人に!その1~エイズと女性の状況~

サハラ以南アフリカでは、エイズの影響が最も深刻な地域であり、エイズが死亡原因の第1位を占めています。世界中の成人HIV陽性者の3分の2人以上(68%)と、HIVに感染した子どもの90%以上がこの地域に集中しています。

ザンビアのHIV感染率は、15歳から49歳の成人人口のうち17%(*2006年の国連機関の推計)がHIV陽性者と推定されており、そのうちの約57%が女性です。ちなみに、サハラ以南アフリカの地域でみても、成人のHIV陽性者の約61%が女性なのです。また、都市部の妊婦さんのHIV感染率は25%、農村部では12%との結果が出ています。都市部では、4人の妊婦さんに1人の割合でHIVに感染している状況なのです。

働き盛りの担い手が亡くなっていく一方で、ザンビアでは60万人のエイズ遺児が報告されている現状ですが、このような状況を皆さん想像できるでしょうか?

エイズは、現在「女性の感染」が深刻化しており、特に若い女性への影響が深刻です。その理由の一つには、女性の方が生殖器の粘膜面が広いことや精液中のウィルス濃度は膣分泌液中のウィルス濃度より濃いこと、などにより女性の方が感染しやすい生物学的な理由が挙げられています。

二つ目の理由としては、男女で教育や雇用の機会が平等でない現状があり、特に、若い女性や少女は、情報や保健サービスに手が届きにくく、男性よりも教育を受ける可能性が少なく、経済的な依存性や貧困につながり、性的な関係でも強制や暴力を受けやすい現状があります。

そして、三つ目には、一夫多妻や妻以外との複数女性とのセックスが男性には容認され、安全なセックスを男性に要求できない、またはしにくいこと、が挙げられています。

「処女の女の子とセックスをするとエイズが治る」という迷信をよく耳にします。ある調査結果によると、「25%以上が蚊によって感染する」、「22%が魔女から感染する」、「15%がHIV陽性者と一緒にご飯を食べることによって感染する」など間違った認識をしている人がまだ多く存在しているのです。



このような状況のもと、ジョイセフではHIV予防啓発活動を草の根レベルで現地のNGOであるザンビア家族計画協会(PPAZ)を協力団体として推進してきています。ジョイセフのプロジェクト地区には、村から選ばれた住民を保健ボランティアや伝統的助産師(TBA)として育成し、これまで家族計画を中心に、栄養改善などを含めたリプロダクティブ・ヘルス活動を推進してきました。

住民による保健ボランティアやTBAが、病院や医者がいないアフリカの多くの村では、村のクリニックと村の住民を繋ぐ重要な役割として担っているのです。

そして、エイズの問題が深刻になる中、保健ボランティアやTBAにHIV/エイズに関する研修を行い、これまでのリプロダクティブ・ヘルスにHIV/エイズを統合させた形で、村での家庭訪問や紙芝居を使った啓発教育活動を推進しています。特に、HIV陽性である妊婦さんが子どもに感染させることのないようTBAを対象とした母子感染予防研修を実施してきました。HIV陽性である女性、陽性でない女性、誰もが安心して出産できるような環境づくりに取り組んでいます。

2009年1月22日木曜日

ザンビアについて

みなさん、初めまして。syuです。
長らく更新が遅れてしまい本当に大変申し訳ないです!!!
ジョイセフに入ってから、アフリカやアジアでのプロジェクトに関わってきてきました。現地での経験をもとに、途上国の状況やジョイセフの取組みについて国内の多くの方に広めていきたいと思っています!

これから、何回かにわたり、ザンビアとHIV/エイズと女性について、ご紹介していきたいと思います。

まず「ザンビア」と聞いて思いつくことは何でしょう?アフリカにある国、としか想像できないかもしれません。南部アフリカに位置し、8つの国に囲まれた内陸国です。気候は大きくは雨季と乾季に分かれていますが、比較的ドライで過ごしやすい気候です。

日本とのつながりで思い出すのは、10円玉。銅が特産であるザンビアですが、日本も10円玉に使う銅を輸入していたそうです。ザンビアのこちらの国旗を見ていただくとわかる通り、緑は農業、羽を広げたわしは自由と困難に打ち勝つ能力を表し、赤は独立闘争、黒はアフリカ人、オレンジは特産の銅を象徴しているとのこと。

ジョイセフが20年近くプロジェクトを行っている地域は、コッパーベルト州といって、首都のルサカから北西へ車で4時間。コッパーという名前の通り、銅の鉱山が多く存在する地域です。

The Real Africa、本当のアフリカと呼ばれるザンビアは、広大な平原と世界最大の人工湖カリバ湖、ビクトリアの滝、17以上の国立公園を持つ自然にあふれた国です。日本の2倍の広さの国土に人口が約1,000万人。
ビクトリア湖を訪問した際は、4月でちょうど雨季が終わりの頃。水がいっぱいに溢れている滝を見ることが出来ました。レインコートを着ていても全身びしょ濡れになりましたが、青い空の下でマイナスイオンをいっぱい浴びて気持ちよかったです!